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『世界中を写真に納めたい』それが私の夢だった。
世界は広い。色んな景色、動物、食べ物⋯⋯色んな物を、見て触って写真に残す。それを詳しく図鑑にしたい。それが私のやりたいことだ。その為に日々勉強してきた。
そして今日私の願いが確かに叶ったんですが⋯⋯思ってたんと違うんよ。
なぜなら、私は今、違う世界の写真を撮っている⋯⋯。
さかのぼること数日前⋯⋯
私の仕事は世界中を飛び回って仕事をしている人の補助だった。
そう、旅行代理店の通訳なのです。
仕事で通訳をして色んな話を聞きながら、お金を貯めては旅行に行きスマホとカメラを携えて目当てのものを写真に納める。
そしていつものように帰りついたら部屋の書斎に籠り、写真を納めて、言葉を綴っていく。そこで机に置いた一杯のコーヒーを飲むのが、私の1日の過ごし方である。
私の愛読書は図鑑だった。朝から晩まで穴が開くほど目を通し、知らない生き物や植物を知るのが楽しかった。
今では歴史ある建物、風景、祭りなどあらゆるものを撮るまでになった。
「もっと世界を知りたいな」
この時、私の独り言は1人の女神に届いてしまった。
『貴方なら私の世界をもっと教えてくれるかもしれないわね。貴方の夢のお手伝いをしてあげるから、世界をよくしてちょうだい』
言葉と共に光が輝いたかと思うと、書斎が暗くなり机が消え、私の座っている椅子だけが取り残された。
『ポイントを稼いで女神ランクをあげると限定解除できるようになるわ。他にも楽しめるようにしておいたわ。ちなみに私の世界の物も沢山写真に納めて図鑑を作ってね!』
「ええっ?待って、なんなん?」
私のバイブルと人生を費やしてきた書斎⋯⋯どこいった?
なみだ目になりながら光を睨み付ける。
私の前に現れたのは女神と地球儀。地球儀はみたことのない世界地図がのっているものだった。
大きな大陸に見慣れない都市の名がある。
『貴方の書斎はここね。頑張って世界を冒険しながら世界をとってね』
女神は世界儀の場所を指差すと椅子が途端に引っ張られ私の目の前は真っ暗になってしまった。
『あとこれを⋯⋯こうしてっと』
「ううーん⋯⋯」
目を覚ますと私は机の上に伏せていた。
私の書斎!ふうっ⋯⋯よかった⋯⋯夢だったのかも。
なんだったんだろう⋯⋯あれは。
ん?机の上に地球儀と見慣れない本が置いてある。
「コンプリートブックって書いてある⋯⋯中身は少し字が書いてあるわね。後のページはカードバインダー?」
『あなたが集めた図鑑登録で、特典を付与できるようにしてあるわ。
私の魔力が入ったスマホに、貴方が持ってたカメラの性能を付与して、より使いやすくしておいたから共に活用してね。
世界儀(地球儀)は行った場所にワープできるようにしてるから、好きなように使って!では私のディストピアの発展に貢献して導いてね。ミネルヴアより祝福を込めて』
「ピーヨよろしくね」いそいそとピーヨの背中へのぼる私。そういえば書斎いってないな。あの書斎は私が小さくなってからあるのか、それとも大きなままなのかしら…。あの木の扉を出て私の知らない世界にきちゃったのよね。明日行ってみようかな。ピーヨにつかまりながら世界樹の宿り木の上にある旅館へ帰りつく。旅館に入ると布団に飛び込み泥のように眠りについた。◇◆◇◆◇◆ピーヨを連れておおきな木の扉の前に来ていた。うん。わたしはどうやら連れてこられた時点では大きかったようだ。入れない。っていうか扉を開けれないのよね。うう。書斎があっても結局、はいれないんじゃ意味ないじゃないの~!!じたばたしながらしばらくたたずんでいた私。そういえばコーヒー店はここら辺にあったような気がする。そうして探すこと1時間。はぁはぁ。やっと見つけた。目印ないんじゃわかんないなぁ。なにか良いものはないかしら。んー。花がいい!意外にもここの世界のこの場所は気候はいいし、どうせなら見応えのあるスポットにしよう。
「では火の起こし方を実演します」はじめは木と木をこすり合わせる摩擦発火具を用意しようかな。舞切り式発火具の写真を用意し、カード化する。ロープで横木と芯棒が結ばれていて、横木を上下することで芯棒が回転して、火切り板との摩擦熱で発火させる道具なんだよね。『女神にロープが認識されました木の加工方法が認知されました』これは私よりは少し大きめなサイズだけど小さいから作るときに参考にしてもらわないと……。あとはまわりに木を植えて同じものを作ってもらおう。「さあ実践をしますので見ておいてください」さあ培ったサバイバルスキルのお出ましだ。よいしょ。よいしょ。大量の黒い炭を作り出し煙を立てる。ボッ。小さく火が付く。いやー私のサイズだとキャンプファイヤーしてるみたいだ。「これが火か。すごいな!!」『村人が知識を得ました。発展ポイントを進呈します』あとは焼いて食べたりするのがいいかも。小麦も石臼《いしうす》があれば尚良《なおい》いよねカード化して石臼《いしうす》を表す。『女神が石臼を認知しました。女神が石の加工を認識しました』小麦の作り方と畑の方法、石臼づくりの指導をしたよ。畑は私が取ってた写真の小麦畑を土地に出現させる。まあ私サイズだからもうジオラマだよ。畑の場所は段差を作ってもらいそこに設置した。時折若干ため息が聞こえる気がする。このとき女神が私が大丈夫って言ってた意味が少し分かった気がする。小さいから利用出来にくいのだ。あくまで参考にしかできないことや大きな人族には得るものが少ないと感じることで私が安全なのがわかった。今はまだ大丈夫だけど、いつどうなるかわからない。気をつけないと。そうこうしているうちに夜になってしまったようだね。この世界の夜は暗い。私の知ってる世界は月明かりがあった。広く澄んだ場所では星々《ほしぼし》が見えて、美しい情景が広がっていて暗いなりに楽しかった。でもこの空、雲が無いのに暗いのよね。明るい時でもわからなかったけどなにかに覆われてるのかしら?ただ今日の景色は火が灯されたことによって村人たちは賑やかにさわいでいる。それに火を使って石を熱し小麦と卵を焼いたことによって香りが少したちこめたのだ。かいだことのないにおいに村人は歓喜し、歓声をあげたりしていたよ。少量とはいえ劇的にたべやすくなっ
「食料の確保の為に女神が小麦というものをくれたがどうやって使えばいいんだ「もうすぐ女神様が使いを遣わしてくださると言っていた。もう少しの辛抱ではないか」ん……小麦?いやまって!!言葉がわかるわ!でもこの言葉、なまりが少し入ってるのね。よく聞かないと少し戸惑うわ。うーん……食糧確保するなら小麦の他にも栄養価が高い食べ物も用意した方が良いよね「おい!なんか飛んでないか?」「あれは女神さまの遣いの鳥だよ!神託で聞いたんだ間違いない」「ピーヨ大丈夫そうね。そこの広場におりてくれるかしら」「ピピピピーヨ」「こんにちは!私はカトレア・グレースっていいます」「女神さまの遣いの鳥の上に何かちいさいのがいるぞ。何か言ってるがまったく聞こえんな」えーん(泣)聞こえないですって。こうなったらあの写真をカード化するしかないわね。取り出したカードはピンマイクである。ミニチュアサイズでちょうど良い感じだわ。「あー。あー。マイクテスト。うん良い感じ」『女神にマイクが認識されました』「あの小さな子?なんだ急に声がでかくなったぞ!」「はじめましてカトレア・グレースっていいます!今回は女神さまに言われてこの村を訪れました」「小麦の植えかたのほかに栄養価が高いものを用意します」いそいそと私は写真を用意する。用意したのは卵だ。カード化すると握りこぶしの大きさの卵が現れる。ミニサイズだけど私にはでかい。両手いっぱいに抱えながらふうふうと息をあらげてしまう。そして卵は割れると中から雛がでてきた。雛の大きさは私ぐらいだけど成長に期待だね。1日たたないと雄、雌わかんないんだよね。とりあえずいまは卵を沢山出そう。10個ぐらいカード化を繰り返す。『女神が鶏を認識しました 女神が卵を認識しました』「鶏の雌は生後120日前後からまた卵を産み始めます。雄と雌が居ることで有精卵を温めればまた鶏が増えるはずです。鶏は地面に落ちているものを比較的なんでも食べて育ちます。卵は生で食べれるのは一日ぐらいしかないので火で加熱してください」「おい!火で加熱ってなんだよ?」あれ?まさか火をしらないの?ということは生でいろいろ食べていたことになるのね。
朝起きて扉を開けると雀が1羽旅館の屋根前に止まっている。正確には宿り木に乗っかっている。『ピピピピーヨ?』 少し変わっている鳴き声である。雀がでかい。⋯⋯いや私がちいさいからなのか。近いっ!きれいなんだけど怖すぎる⋯⋯。羽毛が白いんだね。しかしこれだけでかいと写真の映りはとてもいいかもしれない。スマホを取り出し写真を撮る。『パシャ』『雀を世界に記録しました。女神に情報が伝わりました』『やっほー満喫してるー?今さっき私の世界で移動手段を用意したの。世界儀を使い方を教えたわ。そこの鳥に行きたい場所をつたえたら飛んで乗せていってくれるようにしてるのよ。それにしてもすごいわ。発展度がすごい速さで登録されてる。このままいけばあたしの評判は……ふふふ』おおっ。この雀は女神が用意したのか。スマホがなると世界儀のマークのアプリが出てくる。これがそうか……。おや?村があるみたいだね。アプリを確認し終わると雀の姿が目に映る。じゃあ村に行ってみようかな!とりあえず雀の方を向き雀の名前を考える。「君の名前はピーヨね。これから宜しくね」アプリを作動させると世界儀が3Dで映し出される。 
「ふー」 のんびり過ごして安心してしまったがここからが大変。さすがに寝床がないんだよね。夜は暗くなるし。異世界ということで流石にどうなるかわかんない。旅行バックなんて流石に撮ってないよー。 野宿することもあったけど今の私の状態では何もない。でもお店が出せたならいけるかもしれない! カトレア・グレースの話にでてくる草木を使った魔法を使えるかも知れないし今はやれることをしなきゃね。カトレア・グレースはちいさい。手のひらサイズの小人のエルフだ。大きな生物が来たら食べられてしまう可性がある。深呼吸して大きく息を吐く。まずは本で見た通りにカトレア・グレースが草を使った魔法を再現してみる。イメージを膨らまして目を閉じて手に力を解放し地面に両手をかざす。手をかざした部分があたたかく感じる。すると小さな宿り木が地面から生えてきた。「やった!」『世界樹の宿り木が女神に認知されました』世界樹の宿り木?とりあえずあとは木のてっぺんに私が用意した写真は日本旅館だ。小さな宿り木に小さな旅館だけど私は満足である。なにせ久々の旅館だ。蔓を伸ばしたあと少しうえには階段状の蔦で上がれるようにしておいてと。さてさて中はと⋯⋯写真の一部だからやっぱり狭い。これは詳しく書けば良くなるのかな⋯⋯。詳しく⋯⋯詳しく。
もう一度考えてみよう。私は世界を知りたいと願った。たまたま女神が聞いていた。 知らない土地に来たけど大事な書斎もあるし、私は色んな場所を見たりしてきたおかげでいろんなものが図鑑にでき、写真がカード化できて食べ物だって出せる。多分この子はカトレア・グレースで間違いないだろう。私はこの子の世界にたどり着いてしまったみたい。ただ違うのは私自身。通訳をしてた私がいないのだ。あの泉の精霊スイートピーに見せられた写真の私。確認したけどコンプリートブックの中にないの。確信はないけど女神に私の身体ごと世界を取られた気がする。代わりに私はカトレア・グレースとなって世界を文字どおり撮って発展していかなければ元の世界に帰る事は出来ないのだと思う。「大変なことになってしまった」考えているうちにスマホが鳴る。スマホの文字を確認してみる。『コンプリートブックのページが増えました』